「うちの学校の先輩がディズニーでミッキーを池に落としたから、うちの中学はディズニーランド出禁になったんだよね~」
こんな話を聞いたことがないだろうか?
私は愛知県の田舎出身なのだが、中学生の修学旅行はディズニーランドであった。
高校に入って驚いたのだが、同じ市内でも半分程の中学校がディズニーランドには行っていなかった。
そして全員が全員件の話をし始めたのである。
その当時は「へぇ〜」としか思わなかったのだが、そこから数年後、日本テレビ「月曜から夜ふかし」のご当地都市伝説というインタビュー企画の際に、名古屋でインタビューを受けた男性が、自分の中学生時代の後輩が実際にミッキーを池に落としたと発言していたのである。以来、名古屋市内の全ての中学校はディズニーランドを立ち入り禁止になった…という顛末であった。
しかし私の地元は愛知県内ではあるものの、名古屋からはかなり離れている。そもそもこの噂は愛知県内だけの話なのであろうか?
噂の出所
ネットで調べた所、この噂は中部地方から関西地方にかけて流れていた。(一部東北地方)
これは恐らく中学生の修学旅行先によるものであろう。
関東▶︎関西
四国▶︎九州
と言ったように、ある程度は地域によって修学旅行先が決まっている。
そもそも関東に行かない地域の人達の間にはこの噂は存在しないのである。
そもそもミッキーを池に落とすことは可能なのか?
2025年時点で、ミッキーを池に落とすチャンス(触れ合える)があるのは以下の4つだ。

東京ディズニーリゾート公式サイトより引用
①トゥーンタウンにある、ミッキーの家と、ミート・ミッキー
②メインストリート・ハウス前(抽選)
③フリーグリーティング
④ミッキーのレインボー・ルアウ
①、④は室内なので池に落とすことは物理的に不可能である。
②は屋外ではあるが、マップを見るとメインストリート周辺には池がない事がわかる。よってこれも不可能である。もし彼を池に落とすチャンスがあるとするならば、③のフリーグリーティング(通称フリグリ)である。
フリグリとは、パーク内で事前告知なしで、ゲリラ的に開催されるイベントだ。
しかし、ミッキーがフリグリに現れるのは主にワールドバザール周辺である。ディズニーランド内に池と思われる場所は数箇所あるが、やはりミッキーが池の周辺に現れるチャンスはかなり低そうだ。
では、池じゃなく噴水ならばどうだろう?
ミッキーの家があるトゥーンタウンには噴水が2箇所ある。

東京ディズニーリゾート公式サイトより引用
この噴水も見ようによっては池に見えなくもないだろうか。
…が、トゥーンタウンでもフリグリは行われ、ミッキーフレンズは登場するのだが、肝心のミッキーは登場しないようだ。
万が一ミッキーが池の傍に現れるシチュエーションが有るとしてもキャラクターの傍には必ずキャストがいるので更に難易度は増す。
やはりミッキーを池に落とすことは物理的に不可能と考えていいだろう。
何故この噂が産まれたのか
具体的に何年前からこの噂は生まれたのだろう。
「月曜から夜ふかし」のインタビューを元に推察してみよう。
インタビューをした男性の話をまとめると
・自分たちの2つ下の代の子達からディズニーランドに行けなくなった。
・それは自分の1つ下の代の後輩がミッキーを池に落とした為
この男性の中学時代の1つ下の後輩が犯人だと仮定する。
・この男性が恐らく35〜45歳
・番組の放送が2015年
男性が40歳だと仮定しよう
中学生なのでおよそ25年前、その1個下の代なので24年前
1991年、男性の年齢を考慮しても恐らく1990年〜1995年にはこの噂が流れていたことが予想できる。
だが、前述したようにミッキーを池に落とす事は物理的に不可能であった。
ならば何故?誰が?何の目的でこの噂を流したのか?
この時代に何か学校側が生徒を東京方面に向かわせたくない理由があったのだろうか?
ここからは私の推測でしかないので、なんの根拠も無いことをご理解いただきたい。
1995年、日本中を震撼させた事件があった、そう「地下鉄サリン事件」だ。
麻原彰晃こと松本智津夫が設立した「オウム真理教」が都内を走る地下鉄の3つの路線に猛毒のサリンを撒いた同時多発テロ事件だ。
連日ニュースで取り上げられている光景を見てあなたが親ならどう思うだろう。
「大事な我が子を東京に行かせるのは怖い」という保護者が出ても不思議ではない。
これは子供達の事を大事に思う教師や保護者から生まれた優しい嘘なのではないだろうか。
話の拡散力
なぜこの話はこんなにも爆発的に広がり、数十年に渡って形を変えず語り継がれているのだろうか。
これは恐らく「武勇伝感」が鍵だ。
現に私にこの話をして来た友人達は例外なく全員がどこか誇らしげであった。
これが「自分上の代がディズニーランドでケガをしたので、それ以降その学校はディズニーランドに行けなくなった」
という話ならここまでの広がりは見せていないであろう。
私の通っていた中学校も「10年前はとんでもなく荒れていて、学校中のガラスが全て割られて廊下を原付がウィリーしていた」というスクールウォーズか尾崎の歌詞のようなエピソードが語り継がれていたが、総じてこういうヤンチャエピソードは後世に語り継がれやすいのだ。
まとめ
私の会社の後輩(23歳)にもこの話を聞いてみたのだが
「自分らの2つ上の代がミッキーを池に落としてディズニー出禁なんで、長野に行きました」との答えが帰ってきた!!
驚くべきことにこの「ミッキー池ポチャ事件」は30年近く一言一句姿を変えずに現代まで語り継がれている。口承とは基本的に尾ひれはひれが付きながら語り継がれていくのが一般的だが、これはかなり稀有なケースであるように思う。
このSNS時代に一切姿形を変えずに語り継がれているこの話に、私は宇宙人やUMA並みのとんでもないロマンを感じるのだ。
